北欧神話に触れてみる


このブログはルーン占いやルーン文字に関するものであって北欧神話に関するものではないのですが、個人的には、ルーン文字を北欧神話やそれを生んだ戦士精神溢れるゲルマン民族の世界観と切り離して考えない方がいいんじゃないかなぁ、と思っています。

なぜなら、ルーン文字が生まれた背景と切り離してしまうと、別に「ルーン文字」と呼ぶ必要がなくなるからです。「神秘のオラクル文字」としたっていいわけです。

例えば、16番目にティールという文字があります。
これは軍神テュールのことであり、勇気や挑戦という意味です。
北欧神話におけるテュールの活躍を知らなくても、「ああ、これは勇気や挑戦ね」と占うことはできますが、しかし、テュールがどれほど強く勇敢だったのか知ることで、勇気や挑戦の度合いが全然違ってくるような気がするのですね。
また、古代ゲルマンにおいて、戦いに行く男たちはテュール神の文字を剣に刻んだという話もありますから、「絶対勝つ!」という気概がこもった文字なのです。

ティールが出た時、「ちょっと頑張ってみよっかなー」的なノリではなく、本気ですごい挑戦をしなければいけないことが、文字からひしひしと伝わってくるはずです。
そういう知識があるのとないのとでは、解釈の深さが全然違うと思うのですね。

そこで、ルーン文字の背景にある世界観を知るためにも、重要と思われるお話を北欧神話の中からいくつか取り上げて紹介していこうと思います。
今回は世界創世について。


北欧神話の世界創世
北欧神話の元になる話が生まれたのは「火と氷の国」アイスランドです。
アイスランドは火山活動によって生まれた島で、活動中の火山が200以上、またヨーロッパ最大の氷河があります。森林は、現在国土の1%に満たない面積ですが、昔は国土の1/4が森林で覆われていたそうです。

北欧神話の世界創世は火と氷の衝突から始まります。

神々が生まれるずっと以前、そこにはギンヌンガガプと呼ばれる深淵があるだけでした。
やがて、北の方に氷の国ニブルヘイムが、ギンヌンガガプの南の方に灼熱の国ムスペルヘイムができました。
この深淵からはいくつもの川がニブルヘイムに注いでいたのですが、ニブルヘイムからの凍りつくような風を受け、その淵に氷の塊ができました。
この氷の塊はどんどん大きくなって霜で覆われ、ムスペルヘイムからの熱風を受けると、雫となって滴り落ちるようになりました。

この霜の雫は次第に人の形をとるようになり、ついには巨人ユミルが生まれました。
ユミルは生まれてからも汗をかき続け、彼の汗からたくさんの巨人が生まれることになりました。そして、滴り落ちる雫から牝牛アウズフムラが生まれ、ユミルや他の巨人たちはアウズフムラの乳を飲みました。

ユミルがアウズフムラの乳を飲んでいる間、アウズフムラは氷の岩の塩を舐めていました。すると、その氷の岩から美しく逞しい男が生まれました。彼はブリと呼ばれました。
このブリにボルという子が生まれ、このボルは霜の巨人ヨトゥン族のベストラとの間に子をもうけました。これが、オーディン、ヴィリ、ヴェラという3人の神々です。

やがて、成長して自分たちの力に自信をもった3人の神々は、巨人ユミルを殺します。ユミルが流した血は世界中に溢れ、その血に溺れた他の巨人たちも死んでしまいました。ベルゲルミルとその妻を除いては。
3人の神々はユミルの屍をギンヌンガガプの深淵に投げ入れました。
そして、ユミルの体で大地を作り、血は海や川になり、その水で大地をぐるりと取り囲んで大洋としました。さらに、ユミルの頭蓋骨を天に掲げ、4つの方位を定めました。空の下には脳みそが雲となって漂いました。空が暗くて憂鬱なのはユミルの脳みそが空を覆っているせいです。そこで、ムスペルハイムから飛んでくる火花を集めて太陽や星にしたところ、空は眩しいほど明るくなりました。

……まだ続きはあるのですが、今回はこのへんで。

北欧神話では火と氷の衝突が世界創世の直接的なきっかけになっています。
最初にそれを知った時、「随分変わっているなぁ」と感じました。
しかし、自分が知っている他の国の神話を思い出してみると、共通点が多く、むしろオーソドックスなパターンにちゃんと収まっていました。
その国の気候や風土は神話に影響を与えます。火と氷という組み合わせも寒い国ならではの発想だったのでしょうね。


他の国の世界創世
北欧神話では、火と氷の国が生まれるずっと以前から深い底知れぬ闇を湛えた裂け目、ギンヌンガガプが存在していました。深淵は大地の裂け目、つまり女性器の象徴であり、深淵の奥は子宮を表します。
そう考えると、「ああ、なるほど」と合点がいきます。
大地から命が生まれる話は大地母神信仰に繋がりますし、混沌とした中からふたつの要素が現れ、そこからさまざまな要素が生まれる話も神話の定番です。
北欧神話が生まれたアイスランドは火山と氷河のある国だったので、灼熱や霜といった見慣れない要素が入っていただけで、実は変わっているわけではなかったのですね。

世界創世や国生みの話は、多くの神話に見られるように、混沌とした状態から2つの要素が混じり合って生まれます。
日本の古事記では、イザナギとイザナミが天の浮橋に立ち、混沌とした大地を矛でかき混ぜているうちに、矛から滴り落ちた雫でおのごろじまが生まれます。
ヒンドゥー教の神話でも、ヴィシュヌ神を始めとする神々とアスラ(阿修羅)が不老不死の霊薬アムリタを手に入れようと海を攪拌したところ、他の神々、太陽や月、家畜などが次々と海から飛び出したというお話があります。これは「乳海攪拌」と呼ばれています。

また、巨人から神々や人間が生まれるという話も神話の世界では定番です。
北欧神話の「空の下には脳みそが雲となって漂いました」……という部分で、「ゲッ」とひいてしまったのですが、北欧神話ではユミルを殺してしまったからそういう表現になっただけなのですね。

古代インドの『リグ・ヴェーダ』ではプルシャという原人(巨人)の体から、他の神々や、太陽や月、4種類のカースト(バラモン、クシャトリア、バイシャ、シュードラ)に属する人間が生まれたとされています。
中国では盤古という巨人が混沌とした天地の中から生まれ、どんどん大きくなってやがて死を迎えた盤古は万物の元になったと伝えられています。

テーマが拡がり過ぎてしまうのでここでは書きませんが、神話における世界創世の話には他に世界卵や世界樹という概念もあり、表現は違っても概念的にはやはり共通している部分が多いことが分かります。

北欧神話に登場する世界樹ユグドラシルについては、また別の記事でご紹介します。

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